心筋梗塞のリスクが上昇?見逃してはいけない「歯周病」と心臓の意外な関係

「歯ぐきから血が出る」「口臭が気になる」 そんなお口のトラブルを、「ただの歯周病」と軽く考えて放置していませんか?

実は、歯周病は口の中だけの問題ではありません。近年の研究により、歯周病が「心臓の病気」と深く関わっていることが明らかになってきました。

「まさか、歯と心臓が?」と思われるかもしれませんが、この事実を知らないまま放置することは、将来的な心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めてしまうことにつながりかねません。

ここでは、最新の研究データに基づき、歯周病が心臓に与える影響のメカニズムと、大切な心臓を守るために今日からできる具体的なケア方法について解説します。

■ 1.なぜ「歯周病」が心臓に悪いのか?その恐怖のメカニズム

歯周病は、歯垢(プラーク)の中の細菌が原因で、歯ぐきや歯を支える骨が破壊されていく病気です。では、なぜそれが心臓の病気につながるのでしょうか。

主な理由は、以下の2つのルートで「細菌」や「炎症物質」が全身に広がるからです。

1)細菌が血管に入り込む

歯周病で炎症を起こして出血しやすくなった歯ぐきから、歯周病菌が血管内に侵入します(菌血症)。血液に乗った細菌は全身を巡り、心臓の血管(冠動脈)などにたどり着いて、そこで炎症を引き起こしたり、血栓(血のかたまり)を作りやすくしたりします。

2)全身の炎症を引き起こす

歯周病の現場である歯ぐきで作られた「炎症性サイトカイン」という物質が血液中に流れ込みます。これが全身の血管に慢性的な炎症を引き起こし、動脈硬化を進行させる要因となります。

つまり、口の中の慢性的な炎症を放置することは、常に全身の血管を傷つけ続けているのと同じことなのです。

■ 2.研究データが示す「心臓病リスク」の上昇

実際に、多くの疫学研究が歯周病と心血管疾患の関連を示唆しています。

例えば、イギリスのバイオバンクデータを用いた大規模な追跡調査研究(*1)をはじめ、近年の複数の研究結果をまとめると、歯周病がある人は、そうでない人に比べて心筋梗塞などの心血管疾患にかかるリスクが有意に高まる(研究によっては20~40%程度)という報告がなされています。

これは、決して無視できない数字です。「たかが歯周病」と侮ることは、命に関わるリスクを見過ごすことと同義かもしれません。

■ 3.心臓を守るための具体的な「歯周病ケア」5選

では、歯周病を防ぎ、ひいては心臓を守るためにはどうすれば良いのでしょうか。重要なのは、口の中の細菌を減らし、炎症をコントロールすることです。今日から実践できる5つの習慣を紹介します。

① 1日3回の丁寧な歯磨き

基本中の基本ですが、毎食後の歯磨きは非常に有効です。 韓国で行われた大規模な研究(*2)では、1日3回以上の歯磨きを行うことが、心房細動や心不全の発症リスク低下と関連していることが報告されています。回数だけでなく、1本1本丁寧に磨くことを意識しましょう。

② デンタルフロスや歯間ブラシを併用する

歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れ(プラーク)の約60%しか落とせないと言われています。歯周病菌が最も繁殖しやすいのは、この歯間部です。1日1回は必ずフロスや歯間ブラシを使い、汚れを徹底的に除去しましょう。

③ 定期的な歯科検診とクリーニングを受ける

歯周病は初期段階では自覚症状(痛みなど)がほとんどなく静かに進行します(サイレント・ディジーズ)。自分で気づいたときには重症化していることも少なくありません。 半年に1回、できれば3〜4ヶ月に1回は歯科医院でプロによるチェックと専門的なクリーニングを受け、自分では取りきれない歯石などを除去してもらうことが不可欠です。

④ 禁煙を徹底する

喫煙は、歯ぐきの血流を悪くし、免疫機能を低下させるため、歯周病の最大のリスクファクターです。喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病にかかりやすく、かつ治りにくいことが分かっています。 もちろん、喫煙は心筋梗塞の強力なリスク因子でもあります。禁煙は、お口と心臓の両方を守るための最重要課題です。

⑤ 抗炎症作用のある栄養素を摂る

バランスの取れた食事も大切です。特に、ビタミンC(野菜、果物など)は歯ぐきの健康維持に関わり、オメガ3脂肪酸(青魚など)には抗炎症作用が期待できます。これらを積極的に食事に取り入れ、体の内側から炎症を抑える体づくりを心がけましょう。

■ まとめ

「歯の健康」は、単に美味しいものを食べるためだけのものではありません。それは、「全身の血管と心臓の健康」を守るための重要な防波堤でもあります。

  • 丁寧なセルフケア(歯磨き+フロス)
  • 定期的なプロケア(歯科検診)
  • 生活習慣の改善(禁煙、食事)

この3本柱で歯周病を予防・管理していくことが、将来の心筋梗塞などのリスクを減らし、健康寿命を延ばすことにつながります。 ぜひ今日から、お口のケアに対する意識を少し変えてみてください。


■ 注意事項

このページの内容は、歯周病と全身疾患の関連に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個々の歯周病の進行度や治療、全身状態への影響については、必ずかかりつけの歯科医師や医師にご相談ください。

■ 参考文献

  • *1)Larvin H, et al. “Periodontal disease and subsequent cardiovascular diseases: A 12-year follow-up study using UK Biobank data.” J Clin Periodontol. 2021.
  • *2)Chang Y, et al. “Improved oral hygiene care is associated with decreased risk of occurrence for atrial fibrillation and heart failure: A nationwide population-based cohort study.” Eur J Prev Cardiol. 2020.

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