「昨日まで元気だったのに、急に倒れてそのまま…」
そんな突然死の背景には、心臓のトラブルが関わっていることが多くあります。
日本では、心疾患は悪性新生物(がん)に次ぐ主要な死亡原因のひとつです。
また、国内外の研究から、突然死の多くが心臓の病気に関連していることが分かっています。
こわいのは、本人が「自分の異変」に気づきにくいことです。
胸の痛みがはっきりしなかったり、「疲れかな」「年齢のせいかな」と見過ごされてしまい、気づいたときには手遅れになってしまうケースも少なくありません。
だからこそ、そばにいる家族や身近な人が「いつもと違う」と気づけるかどうかが、命を守る分かれ道になります。
ここでは、突然死を減らすために「大切な人を守るために覚えておいてほしい7つのポイント」を整理してお伝えします。
■ 1.突然の息切れ・動悸を「年のせい」にしない
安静にしているのに息苦しい、少し動いただけで動悸が強くなる。
こうした症状が続く場合、心不全や不整脈など、心臓の病気が隠れていることがあります。
- 階段を少し上がっただけで息が切れる
- 以前より明らかに動けなくなっている
- 横になると苦しくて、座っていた方が楽
このような状態が続くときは、「年だから」で片付けず、早めに内科や循環器内科を受診することをおすすめします。
■ 2.胸が痛くない心筋梗塞もある
心筋梗塞というと「左胸を押さえて倒れる」イメージが強いですが、実際には、必ずしも典型的な胸の痛みが出るとは限りません。
特に女性や高齢の方では、次のような症状だけのこともあります。
- 胃のあたりの重さや不快感
- 吐き気や冷や汗
- 背中やあご、肩の痛み
- 「なんとなく気分が悪い」が続く
胃薬を飲んで様子を見てしまい、実は心筋梗塞だったというケースもあります。
「いつもと違う不快感」が強く続くときは、自己判断で我慢せず、医療機関に相談してください。
■ 3.突然の心停止は「自宅」で起こることが多い
心臓が突然止まる「心停止」は、外出先だけで起こるわけではありません。
多くは自宅など、普段の生活の場で起こることが報告されています。
その場にいるのは、家族やパートナーなど、身近な人です。
- すぐに119番通報できるか
- 心臓マッサージ(胸骨圧迫)を始められるか
- 近くのAEDを使えるか
この3つが、生存率を大きく左右します。
「道で倒れている人を見たらどうするか」も大切ですが、同じくらい、「自宅で家族が倒れたときにどう動くか」を、ぜひ一度イメージしてみてください。
■ 4.冬の夜間・明け方は発症が増えやすい
心筋梗塞や心不全などの心臓のトラブルは、季節や時間帯の影響も受けます。
- 寒い季節
- 夜間から明け方
- 起床後すぐの時間帯
には、血圧が急に上がったり、血管が収縮しやすくなり、発症が増えることが知られています。
そのため、
- 脱衣所やトイレ、廊下と部屋の温度差を小さくする
- 熱いお風呂に急に入らない
- 高血圧を指摘されている方は、薬を自己判断で中断しない
といった日常の工夫が、結果的に突然死の予防につながります。
■ 5.「なんかおかしい」は重要なサイン
救急の現場では、家族の方から
「今思えば、あのときから様子がおかしかった」
という言葉をよく聞きます。
- 顔色が悪い
- ぼーっとして反応が鈍い
- 言葉がいつもと違う
- 立ち上がるとふらつく
こうした、「うまく説明できないけれど、いつもと違う」という違和感も重要なサインです。
「ここまで悪くなったら救急車を呼ぶ」という目安を、ご家族であらかじめ話し合っておくのも一つの方法です。
迷ったときは、ためらわずに119番で相談してください。
相談の電話も含めて、判断を手伝ってくれます。
■ 6.流れを知っている人が一人いるだけで、助かる可能性が変わる
いざというとき、誰もが慌てます。
それでも、対応の流れを知っている人が一人いるだけで、結果は大きく変わります。
基本の流れは次の通りです。
- 反応や呼吸の様子を確認する
- おかしいと感じたら、すぐに119番通報する
- 近くにAEDがあれば持ってきてもらう
- 呼吸や反応がなければ、胸の真ん中を強く・速く押し続ける(胸骨圧迫)
何もしないまま救急車を待つと、助かる可能性は大きく下がってしまいます。
一方で、周囲の人が早く胸骨圧迫やAEDを行えば、生存率が何倍も変わることが分かっています。
■ 7.事前の準備と学びが、命をつなぐ
いざというときに慌てないためには、「その場で調べる」のでは間に合いません。
日ごろから、次のような準備をしておくことが大切です。
- 救命講習などで、胸骨圧迫やAEDの使い方を体験しておく
- 自宅や職場、よく行く場所の周りにあるAEDの場所を調べておく
- AEDが設置されている建物の営業時間も確認しておく
一度でも体験しておくと、「見たことがある」「やったことがある」という感覚が生まれます。
その小さな経験が、いざというときに、体を動かす力になります。
■ まとめ
心臓の病気は、静かに進み、ときに突然命を奪います。
しかし、日ごろから少しだけ意識を向け、サインに気づく目と、いざというときの行動を準備しておけば、助けられる命は確実に増えます。
- いつもと違う息切れや動悸を軽く見ないこと
- 胸の痛みがなくても心筋梗塞の可能性があることを知っておくこと
- 自宅で倒れたときにどう動くかを、家族で話し合っておくこと
こうした一つひとつが、大切な人の未来を守る力になります。
ご家族や身近な方と、この内容をぜひ一度共有してみてください。
■ 注意事項
このページの内容は、心臓病や突然死に関する一般的な情報提供を目的としたものです。
個々の症状や治療については、必ず主治医や専門の医療機関にご相談ください。
- 強い胸の痛み、息苦しさ、冷や汗、意識がもうろうとする
- 目の前で人が倒れ、反応や呼吸が明らかにおかしい
こうした場合は、ためらわずに119番通報をしてください。
■ 参考文献
- 1)日本循環器学会ほか:突然死の診断・治療に関するガイドライン(2023年改訂版)
- 2)American Heart Association. Heart Disease and Stroke Statistics – 2024 Update. Circulation.
- 3)European Society of Cardiology. 2022 ESC Guidelines for the management of patients with ventricular arrhythmias and the prevention of sudden cardiac death. European Heart Journal.